タイトル「夢のあと……始末」
脚本 久我 次四
登場キャラクター
カリュプソ 妖精 三姉妹の長女
エーコー 妖精 三姉妹の次女
マリカ 妖精 三姉妹の三女
悪霊
―――――――――――――――
□新潟競馬場・夏・俯瞰(夕方)
西日がまだ明るい、スタンドの影が長く
緑の芝コースに覆い被さっている。
―――仝スタンド
全レース終了後、清掃作業が行われてい
る。
× × ×
□仝スタンド
ナゼかモノクロになり、音が消える。
(この後、現実世界はモノクロ&無音)
約150の人型(足元は固定され動けな
い)乳白色(カラー)の残留思念が不等
間隔でボッーと揺れている。
妖精エーコーとマリカ(カラー・身長は
思念の約半分)が羽根をぱたつかせ思念
達の中を花畑の蝶のように飛び回ってい
る。
□その上空5m程
妖精カリュプソ、警戒飛行をしていて、
カリュプソM「叶わなかった強い欲望は時に、
残留思念となる事があります」
スタンド全体をくまなく飛ぶ。
□仝・スタンド
思念達、呆けた顔でゴール方向を見てい
る。
エーコー、掌にストローをポンと出す。
思念の肩に差し吸い始める。思念が少し
づつ薄くなり、吸い尽くされ消えてしま
う。
その奥にカリュプソも降りてくる。
マリカ「(かぶって)キャアアアッーーー」
振り向き、悲鳴に向かって飛ぶ二人。
カリュプソ「悪霊?」
険しい顔でスタンド後方に向かう。
□スタンド・上層部
―――にマリカが倒れている。
思念の一つ(悪霊・動ける思念)がゆっ
くり近づき(早くは動けない)大振りな
フックでなぐりかかる。
エーコー、低空飛行で、
エーコー「マリカッ!」
間一髪すくい上げる。
悪霊空振り、バランスを崩し転げ落ちる。
エーコー、マリカの脇の下に掌を入れ、
吊り下げ状態で空中停止。
カリュプソが近づいて、
カリュプソ「大丈夫? マーちゃん」
マリカ苦しそうに目を開け、
マリカ「……ちょっと痛かった」
悪霊、思念をつかみ手から吸い始める。
思念が消えるとブルッと震えて少し大き
くなる。
カリュプソM「(かぶって)まれに思念を残
したまま命を落とす人がいます」
カリュプソ、掌に「フッ」と息をかける
と洋弓が現れる。
カリュプソM「死んだ人の魂は思念に引き寄
せられ悪霊となります」
悪霊の正面5m程に回って弓を引く。
カリュプソM「それだけなら大した事がない
のですが……」
矢を放つ。
思念に突き刺さるが、平然としていて、
矢が体内に沈んで行く。
エーコー「エッ?」
カリュプソ「半魂?……」
ア然と見つめる3人。
エーコー「まずくない? 姉貴! こんなト
コで半魂なんて」
カリュプソ「じきに全魂になると思うケド」
弓をクルッとバトンの様に回すと、弓が
消える。
カリュプソ「マーちゃん、飛べる?」
エーコーの下で羽根をパタパタさせ、
マリカ「……大丈夫だよ〜」
カリュプソ「じゃあ、この人の臭いをたどっ
て息の根、止めて来てくれる?」
マリカ「うん、わかった」
マリカ、エーコーから離れ臭いを嗅いで
スタンド出口に飛んで行く。
エーコー、マリカを見送りカリュプソの
傍に来て、
エーコー「ナンなのコイツ。競馬に負けたか
らって自殺でもしちゃったワケ?」
カリュプソ「さあ? とにかく時間を稼ぎま
しょう」
二人、悪霊の移動先へ先回りする。
カリュプソM「まだ死んでない。つまり半分
生きている状態で現世をさまよう人の魂を、
半魂といいます」
他の残留思念を抱え、
カリュプソM「この状態では、私達には処理
できません」
ゆっくる歩く悪霊を尻目に遠くへ運ぶ。
□国道・歩道上2m(夕方)
マリカが飛ぶ。進行方向へ車道渋滞して
いる。
―――マリカの視界
交差点の事故現場が見えてくる。ガード
レールを突抜け歩道に乗り上げた車。血
のりがある。
マリカ「(見回して)はあ〜、馬券が当たら
ず、車に当たっちゃったんだあ」
汗ジト。
旋回した後、国道・車道上2mを飛ぶ。
進行方向と逆の車線が渋滞している。
□競馬場スタンド(夜)
カリュプソとエーコーが思念の足元を手
で斬り、抱えて移動させている。
カリュプソM「悪霊が周りの思念を取り込み
ある大きさになると、現実世界への災いと
なります」
悪霊、思念を吸い大きくなっている。
□豊栄中央病院(4階建て)正面玄関(夜)
―――に救急車が止まっている。
その脇をマリカが飛びながら中へ、
× × ×
―――仝・集中治療室内
医師、看護婦、慌ただしく処置中だ。
マリカ、すり抜け治療台の患者の上に
マリカ「ごめんなさい。この人はもう無理な
の」
マリカ、「フッ」と掌に息をかけるとポ
ンと背丈より長い槍が現れる。
マリカ「エイッ!」
患者に槍を突き刺す。治療台でドクンと
跳ねる。
心電図モニターが平坦になる。
看護婦が医師に向かって叫ぶ。
しり目にマリカ、治療室から出て行く。
□競馬場(夜)
悪霊、3倍の大きさになっている。突然、
悪霊「グオオオォォォォォォォォォォォ!」
カリュプソ「(かぶって)……どおやら、
マーちゃんの方は、うまくいった様ね」
悪霊「はあ〜。苦しい〜。なんで本命なん
じゃ。穴が来なきゃ、いつまでたっても取
り戻せんじゃないかぁ」
カリュプソとエーコー、悪霊に近づいて、
エーコー「……穴狙い? んな事してるから
元手も尽きたんじゃないのぉ?」
悪霊「も・と・で? んなモンなんとでもな
るわい、ワシは経理担当じゃッ」
二人、同時に、
カリュプソ「……エッ? 会社のお金でやっ
てたのお〜?」
エーコー「……エッ? 会社の金でやってた
んかいっ!」
あきれ顔のカリュプソ、弓を出し悪霊の
正面に回り、弓を引き、矢を放つ。
悪霊に突き刺さり、今度は手ごたえが
あって、
悪霊「ウグゥゥゥーーー」
カリュプソ「う〜ん、さすがにここまで来る
と……。エーちゃん、お願い!」
カリュプソ、上空へ退く。
エーコー代わって悪霊の正面に、
エーコー「あいよっ!」
胸元で両手を合わせ念を込める。手元に
発光球。徐々に大きくなる。勢い良く悪
霊に向け突き出し、
エーコー「ハッ」
青白い雷光が横走りし悪霊に当たる。
矢がその光りを一点で吸引し、
体内に雷光が流れ込んで行く。激しく明
滅して、
悪霊「グオ! グオ! グオォォォーー!」
体表からパラパラと砂の様に散りやがて
消滅してしまう。
エーコーの横にカリュプソが降りてきて、
カリュプソM「欲望の後始末。それが私達の
お仕事です」
マリカ(OFF)「お姉ちゃ〜ん」
マリカ、手を広げニコニコ顔で飛んでく
る。
カリュプソ、エーコーにじゃれるように
抱きつく。
END
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